離れていても届いてる

 

 

防弾の握手会に行ってきた。前回はシングルを買うことすら嫌で、の癖にレポが流れてくるとめちゃくちゃでかい溜息をつくという超アンビバレントな感情を持ちながらその日をやりすごしたのだけれど、時間が経って気持ちも落ち着いて握手会行ってみたいな、という気持ちに自然となった。

まあ何枚か買えば当たるでしょ、と気楽に考えていたから第一次の大量の落選メールには正直血の気が引いた。舐めていた完全に舐めていた。気付けば外れる度にCDを買っていたしあの時の感じは今でも怖いなと思う。オタク人生で初めて「積む」という経験をした。ギャンブルと何ら変わんないな、とも薄々感じてた。周りの人はあまり買っていなかったからちょっと馬鹿なことをしているような気持ちにもなったけれど、一目会えて会話できるならなんだってよかった。

そして何度目かの当落。8時きっかりに届いたメール、結果はVさんとJINさんだった。

一気にふたつ当たることってあるんだ、驚きと興奮でつい誰もいない部屋の中で飛び跳ねながら泣いた。気持ち悪。

 

そんな気持ちも束の間、私は前日まで気が病んでいた。まあいつものことだろと言われたらそれはそう、と返すしかないけれど。この当落前くらいまでは一年ぶりの勢いで心身が安定していて「希死念慮が見事になくて珍しいな〜」と思っていた矢先、体調をめちゃくちゃ壊した。

なんとか治った後も気持ちは元にいた場所に連れ戻されずっと死にたいなぁと唱え続け、また同じタイミングで推しに対しての激重な感情が湧き出てくるもんだからまぁ地獄。文字で見ると安っぽいでしょう?私もそう思う。でも涙は止まらなかった。

 

当日、のそのそ名札を作ってメイクをして家を出る。バスの窓に映る自分の顔が気持ち悪くて反吐が出そうだった。会場に着くと人が沢山いて、人生で絶対関わることは無いだろうな、みたいな人ばかりでとても不思議な感じがした。

集合時間になって、並んでると目の前にVという紙が見えてマジで握手するんか…という訳分からん感情になった、そんな訳分からん感情のまま流水のように列が進んで、気が付いたら目の前にキムテヒョンがいた。ふわっと握手したなと思った瞬間もう身体はブースの外。スムーズすぎる一連の流れ、夢でも見ていたのか?

ホールを出るまでゆっくり歩きながらさっき見た0.5秒を反芻する。口は自然と開いていた。さぞ気色悪い表情だっただろう。でも顔を作る余裕なんてなかった。出てくる人達はだいたい泣いていてそんな人たちを見る度に私はこれは醒めない夢を見ているんだ、という冷静な感情になった。全然意味がわからない。

 

そのまま休む暇なくJINさんの部へ。先程の口溶けが良すぎる時間のおかげで緊張する暇さえなかった。ただ隣がSUGAさんだったため、「あそこに並んでいる人達は皆これから私の推しと握手するんだ」と思うとちょっとだけ気持ちが淀んだ。そんな自分が嫌で、お前これからワールドワイドハンサムと握手するんやぞ、と自分を叱責し、握手までの時間を待った。その時間ずっと隣の子が口をパクパク動かしていて、おそらく喋る練習をしていたのだと思う。とても可愛かった。私は何を喋ろう?

決めないままもう次の番になって、あれよあれよとジンさんの前に立った。ブースに入った瞬間時間の流れが遅くなるようなそんな感覚がしっかりあった。ゆっくり歩き出しゆっくり手に触れ、やっとの思いで出てきた言葉は「…大好きです」…何ともありきたり!

ジンさんは間を置くことなく同じ言葉を返してくれた。よく分からなかった。そこからブース外に出るまでの記憶が本当に無い。ただ私の前にジンさんと握手していた女の子が腰を抜かし口元を抑えたまま突っ立っていて、そんな彼女と自然と目が合った。その瞬間私達は初対面にもかかわらず肩に手を置いて声をかけあった。並んでいる時は一言も話さなかったのに。不思議だなぁ。

ホールを出るまでの道のりが先程とはまた打って変わって別の夢見心地だった。私の身体なのに私のものじゃないみたいな。多分名札を大好きな子の名前で行ったからだと思うけど。咄嗟にTwitterで繋がっているジンさん推しの人達の顔が浮かんできて、こんな素晴らしい人間を推してる人達すげえなぁ…と改めて思った。そういうふうに思わせるジンさんもすごいんですけどね…。

 

帰り道もふわふわしていて、一気に世界の防弾少年団のメンバー2人と握手して会話したという事実が頭にこびりついて上手く処理ができなかった。推しと握手したかったとか、もうそういう次元ではないのだ。多分あれがユンギさんならその日のうちに自害している。

 

日本で生まれ普通に生きてきた20歳、防弾少年団の曲を毎日のように聞いて自分を鼓舞してきた。映像で見て耳で聞いて、ライブでは遠くの場所でキラキラ光っている別次元の韓国のアイドル達、普通に生きてたら関わることなんてない存在。そんな人達と私の人対人の数秒がちゃんと存在していた。本当にこんなことがあるんだな、と涙は出なくとも心の奥底が潤うような感覚があった。

 

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次の日からはまた普通の毎日で、Twitterの文字を遡ったりする内にまた気分は元の位置に戻った。正直あの瞬間を思い出して毎日頑張れるほど器用な人間ではないから。そして何となくFACE YOUR SELFのDVDを見てたらDNAの時の握手会の様子が収録されていて、流れるように次々と握手していくメンバーを見てあぁ私は本当にあの中のたった一人でしかなかったのだな、と少しだけ傷ついたりもした。当たり前なんだけどね。

 

それでも、あの数秒がきちんと頭に記憶されてかけがえのないものになったことは事実だ、誰にバカにされても私はああいう瞬間がまだあるのなら生きてみようかなぁ等と柄にもなく思う。次があることが当たり前ではないけれど、弱い人間はそんな希望を少しなら抱いてもいいんじゃないか。

そしてその夜に聞いたLightの最後「離れていても届いてる」という歌声を以前の何倍も噛み締めた。いつかまた届いたらいいな、そう思う。

 

 

離れていても届いてる。

 

 

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190716